新築マンション購入時の金銭面での注意点

20代後半から30代の方の中には、マンションの購入を検討している方も多いのではないでしょうか。

私は、現在、賃貸マンションに住んでいるのですが、たまにポスティングされるマンション販売のチラシには、「新築分譲マンション ローンは月々返済〇〇円」と、今払っている家賃と変わらないか、むしろ家賃より安い(!?)金額が書かれていて、思わず、「マンションを買うのもありか!!」などと思ってしまいます。

将来的には、私もマンションを購入したいと思っていますが、マンションは大きな買物ですので、絶対に失敗は避けなければなりません。

そこで、今回は、新築マンションを購入する際の注意点について記事にしました。

マンション購入時の注意点は多岐にわたりますが、この記事では、特に金銭面での注意点を掘り下げて検討しています。

1.借りすぎに注意!

新築マンションを購入するときは、通常、住宅ローンを組むことになると思います。

その際には、住宅ローンの借りすぎに注意しなければなりません。

住宅ローンを借りすぎてしまうと、家計の赤字が続き、いずれ返済困難な状態に陥ってしまいます。

1.1 住宅購入後の固定費    

例えば、現在の家賃が10万円だから、毎月10万円返済の住宅ローンを組めるだろうと思うのは危険です。

住宅を購入すると、住宅ローンの返済の他に、管理費、修繕積立金、固定資産税、都市計画税、団体信用生命保険・火災保険の保険料等もろもろの費用が固定費としてかかってきます。

例えば、管理費ですが、国土交通省の平成25年度マンション総合調査結果によると、管理費の平均(1㎡当たり)は、単棟型のマンションが月額152円、団地型だと月額120円のようです(注1)

また、修繕積立金については、後述のように、適正な修繕積立金の目安の平均値(1㎡当たり)は月額218円とされています。

そうすると、管理費と修繕積立金だけで、毎月370円(1㎡当たり)はかかることになります。

70㎡のマンションであれば、管理費と修繕積立金だけで、毎月2万5900円の固定費が発生するわけです。

1.2 無理のない月々の返済額の計算を    

固定費の他に、今はかかっていなくても、将来的にかかってくる大きな費用(子どもの教育費、親の介護費用、車の買換費用、家の修繕費など)も考えないといけません。

また、老後のための貯蓄もしなければなりません。

そこで、住宅ローンを組むときは、月々のローン返済額だけに目を取られるのではなく、マンション購入に伴うその他の費用(管理費、修繕積立金等)と将来的にかかってくる費用(子どもの教育費等)や貯蓄をすることも考えながら、「無理のない月々の返済額」を検討する必要があります。

「無理のない月々の返済額」を計算するには、ライフプランニング表を作ってみるのが良いと思います(ライフプランニング表のモデルは、日本FP協会のホームページからダウンロードできます)。

もちろん、将来、どんな費用がかかるかを正確に把握することは難しいと思います。

それでも、将来の収入と支出を予測することで、家計における住宅ローンの返済余力がある程度分かりますので、住宅ローンを借りすぎてしまい、将来、生活が苦しくなるという事態を避けられると思います。

2.頭金なしでの購入に注意!

新築のマンションを購入すると、その価値は、一般的に、購入すると同時に大幅に下がります(都心の駅近物件は例外ですので後述します)。

日本経済新聞の記事(株式会社カンテイの首都圏中古マンションのデータを参考にしたもの)によると、新築マンションの価値は、2~3年経つと新築時の8割ほどになり、10年も経つと6割程度になってしまうようです(2014年3月23日日本経済新聞)(注2)

このように、購入すると同時にマンションの価値は大幅に下がってしまうので、頭金ゼロの場合、住宅ローンの返済を始めて20年間は、保有するマンションの価値がローン残高を下回るようです(これを「オーバーローン」といいます)(注3)

このような時期に、仕事の都合(失業、転職などによる収入減少)や家庭の都合(子どもの教育費や親の介護費による支出増加)で、住宅ローンの返済が苦しくなると大変です。

購入したマンションを売却したいと思っても、住宅ローンを完済して担保を抹消しなければ誰も買ってくれません。売却代金だけでは完済できない場合、不足分の埋め合わせができればいいのでしょうが、家計が苦しいと、そんな資金は出せないでしょう。

結果として、マンションは売れない、けど、住宅ローンの支払は苦しいとなり、最悪、自己破産にもなりかねません。

このようなリスクを避けるためにも、マンションの購入時には、諸経費とは別に、頭金として購入金額の2割程度を用意するのが良いようです。

頭金を2割支払った場合、住宅購入後、大半の時期で、オーバーローンを回避できるようですので(注4)、仮に、マンションを売却せざるを得なくなっても、追加の出費なしに売却することができます。

頭金なしでの購入を考える前に、将来、仕事や家庭の都合により、収入が大きく減ったり、支出が大きく増えた場合のことを考えた方が良いと思います。

3.高騰中の都心の駅近物件に注意!

マンションを新築で購入すると、価格が大幅に値下がりするという一般論をお話ししました。

では、資産性が高いと言われる都心の駅近物件はどうでしょうか。

株式会社東京カンテイが2017年末に、東京都区部の築10年の中古マンションの価格を調べた結果によると、最寄り駅から徒歩3分以内の物件は、新築時の平均分譲価格より10%値上がりし、徒歩6分以内だと、ほぼ値段は変わらないそうです。

他方で、最寄駅から徒歩7分超~10分以内の物件は5%下落しており、ここから最寄駅から離れるほど下落していき、徒歩21分以上だと22%も下落しているそうです(注5)

これだけを見ると、多少高くても都心の駅近物件を選べば、値下がりするおそれは低いように思えます。

しかし、これはあくまで10年前(2007年)の価格と比べた場合の下落率です。

近年は、マンション価格が高騰しているようですので、駅近物件だからといって安易に購入するのは危険だと思います。

「いずれは、中古価格に収束する形で値下がりする可能性が高い」との見解もあるので(2018年1月25日日本経済新聞)(注6)、駅近物件の購入を検討する際は、近くの中古物件の値段と比べて、価格が高すぎないか検討した方が良いと思います。

4.管理費、修繕積立金の値上がりに注意!

マンションを購入し、区分所有者(マンションの各室の所有者を区分所有者と言います)になると、自動的に管理組合の構成員(組合員)に組み込まれます。

そして、組合員は、毎月、管理費と修繕積立金を管理組合に納めなければなりません。

管理費は、日常の管理経費(管理会社への委託費、共用設備等の日常の保守維持費用など)に充てられ、修繕積立金は、将来の修繕費用(外壁塗装工事、給排水管工事など)に充てられます。

この管理費と修繕積立金ですが、新築分譲時の金額が十数年先も続くわけではなく、一般的には、年を経るごとに値上がりしていきます。

4.1 管理費が値上がりする理由    

分譲当初は、設備も新しいので、共用設備の保守維持費用もそれほどかからず、安い管理費で済みます。

しかし、年月が経って設備が劣化してくると、どうしても保守維持費用がかさみますので、それまでの管理費では不足するという事態が生じてくるのです。

そのため、年を経るごとに管理費を値上げせざるを得ないのです。

4.2 修繕積立金が値上がりする理由    

修繕積立金の積立方法には、「均等積立方式」と「段階増額積立方式」というものがあります。

「均等積立方式」とは、長期修繕計画を作成し、計画期間の推定修繕工事費の累計額を、計画期間中均等に積み立てる方式です。

また、「段階増額積立方式」とは、「均等積立方式」と同じ累計額を、当初の積立額を抑えながら、段階的に値上げをしていくことで積み立てる方式です。

新築分譲マンションの場合、修繕積立金が低い方がデベロッパーは販売しやすいので、ほとんどが「段階増額積立方式」を採っているようです(注7)

このように、多くの新築マンションが「段階増額積立方式」を採っているため、年を経るごとに、修繕積立金の金額が値上がりするのです。

なお、マンションによっては「段階増額積立方式」と併用して、分譲時に「修繕積立基金」などの名目で一時金を徴収し、将来の値上げ幅を抑えているパターンもあります。

4.3 適正な修繕積立金の金額    

新築分譲マンションの中には、修繕積立金を著しく低く設定している例も見られるようです(注8)

修繕積立金の金額があまりに低いと、いざ大規模修繕をするときに、それまでに積み立てられた修繕積立金では工事費用を賄えないという事態も生じてきます。

大規模修繕をしないとマンションの居住環境が悪化し、資産価値も低下してしまいますので、大規模修繕は避けられません。

しかし、修繕積立金では賄えない以上、組合員から一時金を徴収して対応するか、金融機関から借り入れをした上で、月々の修繕積立金を値上げするといった対応をとらざるをえません。

国土交通省の調査によると、大規模な修繕工事実施時に、工事費の調達を修繕積立金だけで行った割合は、80 %のようです(注9)

逆に言えば、20%のマンションでは、一時金の徴収や金融機関からの借り入れを行っていることになります。

このように、修繕積立金の金額があまりに低いマンションを買ってしまうと、買って十数年後の大規模修繕のときに、高額の一時金を徴収されるということにもなりかねません。

修繕積立金が安すぎるかどうかを判断するには、国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」が参考になります(ガイドラインは国土交通省のホームページから見ることができます。)。

このガイドラインによると、例えば、15階未満の建物で、建築延床面積が5000㎡未満の場合の修繕積立金の目安の「平均値」は、1㎡あたり218円(月額)、「事例の3分の2が包含される幅」は、1㎡あたり165円~250円(月額)だそうです。

修繕積立金の金額は、事例ごとにばらつきが大きく、目安の幅に収まっていないからと言って、直ちに不適切な水準とは言えないようですが、目安の幅を下回る場合には、長期修繕計画の内容や修繕積立金の積立方法等についてチェックをした方が良いようです。

 

(参考にしたサイト、文献等)

注1 国土交通省「平成25年度マンション総合調査結果〔データ編〕」p.176

注2 日本経済新聞2014年3月23日記事「怖いのは10年後 マイホーム購入焦る頭金ゼロ派」

注3 注2の記事

注4 注2の記事

注5 日本経済新聞2018年1月25日記事「新築マンション「駅近=資産性が高い」は本当か」

注6 注5の記事

注7 国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」の概要

注8 注7のガイドラインの概要

注9 国土交通省「平成25年度マンション総合調査結果〔データ編〕」p.262

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