妊娠出産、不妊治療、レーシック、インプラント治療をしたときは医療費控除の申告を忘れずに

会社員、公務員には節税の手段が少ないですが、数少ない節税の方法として、医療費控除というものがあります。今年は病気でお金がかかったなあ、というときは、医療費控除を申告することで多少納めた税金が返ってくるかもしれません。妊娠出産、不妊治療、レーシック、インプラント治療等をしたときは、例年よりも出費がかさんでいると思いますので、節税のために医療費控除の申告を忘れずに行いましょう。この記事では、医療費控除を申告するメリットや注意点を見ていきたいと思います。

1.医療費控除はどんな制度?

医療費控除は、「1月〜12月までに支払った医療費の合計金額」から「保険金などで補填される金額」を控除した金額が、所得の5%か10万円どちらか低い方の額を超えた場合に、その超えた部分について(上限200万円)、所得税と住民税の減税を受けることができるという制度です(国税庁のサイト(No1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)参照)。

計算の詳細は割愛しますが、会社員、公務員の場合、年収(総支給額)300万円以上であれば所得の5%は10万円を超えることになります。したがって、年収300万円以上の会社員、公務員の方は、一年の医療費が10万円を超えたときに医療費控除の申告をすることが可能となります。また、アルバイト等で年収が300万円よりも少ない場合は、所得の5%を超えた額の方が低くなるので医療費が10万円いかなくても医療費控除の申告ができます。

なお、自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために医療費を支払った場合も含まれます(国税庁のサイト(No1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)参照)。例えば、夫が会社員、妻が専業主婦、未成年の子どもがいる世帯では、夫は、自分の医療費だけでなく、妻や子どもの医療費も含めて医療費控除の申告をすることができます。また、共働きで夫婦それぞれに所得があり配偶者が扶養にならない場合でも、医療費控除については生計を一にしていれば合算できますので、所得の多い方(所得税の税率が高い方)が合算して申告をすると有利です。

2.控除の対象となる「医療費」とは?

控除の対象となる「医療費」については、国税庁のサイト(No.1122 医療費控除の対象となる医療費)に書かれていますので、以下に引用します。

① 医師または歯科医師による診療または治療の対価(ただし、健康診断の費用や医師等に対する謝礼金などは原則として含まれません。)

② 治療または療養に必要な医薬品の購入の対価(風邪をひいた場合の風邪薬などの購入代金は医療費となりますが、ビタミン剤などの病気の予防や健康増進のために用いられる医薬品の購入代金は医療費となりません。)

(注)平成29年1月1日から令和8年12月31日までの間に支払う特定一般用医薬品等の購入費は、その年中に健康の保持増進および疾病の予防への取組として一定の健康診査や予防接種などを行っているときに、通常の医療費控除との選択により、セルフメディケーション税制(特定一般用医薬品等購入費を支払った場合の医療費控除の特例)の対象となります。

③ 病院、診療所、介護老人保健施設、介護医療院、指定介護療養型医療施設、指定介護老人福祉施設、指定地域密着型介護老人福祉施設または助産所へ収容されるための人的役務の提供の対価

④ あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師による施術の対価(ただし、疲れを癒したり、体調を整えるといった治療に直接関係のないものは含まれません。)

⑤ 保健師、看護師、准看護師または特に依頼した人による療養上の世話の対価(この中には、家政婦に病人の付添いを頼んだ場合の療養上の世話に対する対価も含まれますが、所定の料金以外の心付けなどは除かれます。また、家族や親類縁者に付添いを頼んで付添料の名目でお金を支払っても、医療費控除の対象となる医療費になりません。)

⑥ 助産師による分べんの介助の対価

⑦ 介護福祉士等による一定の喀痰吸引および経管栄養の対価

⑧ 介護保険等制度で提供された一定の施設・居宅サービスの自己負担額

⑨ 次のような費用で、医師等による診療、治療、施術または分べんの介助を受けるために直接必要なもの

(1)医師等による診療等を受けるための通院費、医師等の送迎費、入院の際の部屋代や食事代の費用、コルセットなどの医療用器具等の購入代やその賃借料で通常必要なもの

(注1)電車やバスなどの公共交通機関が利用できない場合を除き、タクシー代は控除の対象には含まれません。

(注2)自家用車で通院する場合のガソリン代や駐車場の料金などは、控除の対象には含まれません。

(2)医師等による診療や治療を受けるために直接必要な、義手、義足、松葉杖、補聴器、義歯、眼鏡などの購入費用

(3)身体障害者福祉法、知的障害者福祉法などの規定により都道府県や市町村に納付する費用のうち、医師等の診療等の費用に相当するものや上記(1)・(2)の費用に相当するもの

(4)傷病によりおおむね6か月以上寝たきりで医師の治療を受けている場合に、おむつを使う必要があると認められるときのおむつ代(この場合には、医師が発行した「おむつ使用証明書」が必要です。)

(注)おむつ代についての医療費控除を受けることが2年目以降である場合において、介護保険法の要介護認定を受けている一定の人は、市町村長等が交付するおむつ使用の確認書等を「おむつ使用証明書」に代えることができます。

⑩ 日本骨髄バンクに支払う骨髄移植のあっせんに係る患者負担金

⑪ 日本臓器移植ネットワークに支払う臓器移植のあっせんに係る患者負担金

⑫ 高齢者の医療の確保に関する法律に規定する特定保健指導(一定の積極的支援によるものに限ります。)のうち一定の基準に該当する者が支払う自己負担金(平成20年4月1日から適用されます。)

3.保険適用外の診療は対象?

医療費控除は保険診療分だけと思いがちですが、保険適用外の自費診療の費用も医療費控除の対象となります。

例えば、レーシックやインプラント、入れ歯、妊娠・出産、不妊や不育症の治療は、一部保険適用があるものもありますが、自費診療になる部分が多く医療費が多くかかります。医療費控除は保険適用・保険適用外問わず治療を目的とするものが対象になるため(上記2①、⑥)、レーシックやインプラント、入れ歯、妊娠・出産、不妊や不育症の治療にかかった費用は医療費控除の対象になります(妊娠・出産に関する費用には、妊娠と診断されてからの定期検診、検査の費用等が含まれます。詳細は、国税庁のサイト(No1124 医療費控除の対象となる出産費用の具体例)参照)。

ただし、出産費用など出産一時金などで補填を受けた分は差し引くので(国税庁のサイト(No1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)参照)、最終的に持ち出しになった分のみが対象です。また、インプラントや入れ歯はあくまで必要最低限のものが対象です(あまりないとは思いますが、オプションで高級な素材を使うなどすると対象外になります)。

また、子どもの歯列矯正も医療費控除の対象になります。大人の歯列矯正についても治療を目的とするもの(例.嚙み合わせが悪く会話や食事に支障をきたすため治療が必要と歯科医師が判断した場合)は医療費控除の対象ですが、美容を目的とするものは医療費控除の対象外です。

費用の種別 医療費控除の対象か?
レーシック、インプラント、入れ歯、子どもの歯列矯正の費用 〇(対象)
妊娠・出産費用 〇(対象)
不妊、不育症治療の費用 〇(対象)
大人の歯列矯正の費用 △(治療目的は対象。美容目的は対象外)

 

4.病院への交通費は対象?

交通費はバスや鉄道など公共交通機関を利用した場合は医療費控除に含めて良いこととされています(上記2⑨(1))。領収書もなくても良いため公共交通機関を利用している場合はメモなどをきちんと取っておきましょう。

タクシーや新幹線はそれを利用するしかそこに行く手段がなかった場合のみ対象になります(上記2⑨(1)(注1))。

例えば、タクシーであれば足を怪我をしていて運転ができなかったり、深夜で公共交通機関が動いていない場合です。新幹線は基本的には新幹線を利用しなければならないほど遠い医療機関でしか診療ができない場合に限ります(近くでも診療してくれる医療機関はあるが先生の評判が良いから遠くの病院を選んだ場合は対象外です)。

また、自家用車の場合は、ガソリン代、駐車料金も含めて全て対象外です(上記2⑨(1)(注2))。

費用の種別 医療費控除の対象か?
公共交通機関(電車、バス)の費用 〇(対象)
タクシー代、新幹線代 △(場合により対象)
自家用車のガソリン代、駐車料金 ✕(対象外)

 

5.ドラッグストアで購入した風邪薬は?

ドラッグストアで購入した市販の風邪薬や湿布、頭痛薬など病気の治療に使う薬は医療費控除の対象になります(上記2②)。

1つ1つは少額なので、レシートを捨ててしまいがちですが、入院したりレーシックの治療をしたりした場合はそれだけで10万円を超えることも多いのでそこにプラスしてあげるとより多く節税することができます。

6.ふるさと納税をしている方が医療費控除の申告をする場合は注意が必要

医療費がたくさんかかったから医療費控除を申告しようと考えている方。ふるさと納税をしている場合は、以下の点に注意が必要です。

6-1.ワンストップ特例は適用されなくなる

ワンストップ特例は、確定申告をしないことが前提の制度です。ワンストップ特例を申告しているから、ふるさと納税は申告しなくても大丈夫と思って申告しないでいると住民税(※1)はふるさと納税を減額せずに税額を確定します(ふるさと納税は、ただの寄附になってしまいます)。医療費控除を申告する場合は寄附金控除(ふるさと納税)も合わせて申告が必要です(国税庁のサイト(No1155 ふるさと納税(寄付金控除)参照)。

※1:ワンストップ特例の申告をした場合、寄附金額に応じて住民税が控除されます。ちなみに、確定申告をした場合は寄附金額に応じて所得税と住民税が減額されるため、お住いの市区町村にとっては確定申告をしてもらった方が所得税の減収額が抑えられるということになります(ワンストップ特例でも確定申告でも納税者個人の減税額は同じです)。

6-2.ふるさと納税の上限額が下がる

ふるさと納税の上限額は、所得から控除を引いた後の金額で計算します。医療費控除の控除額が大きいとその分ふるさと納税できる額も減ってしまうので、上限ギリギリでふるさと納税をしている場合は、注意が必要です。

ふるさと納税の各ポータルサイト(例.ふるさとチョイス)では、医療費控除の控除額を入れてふるさと納税の上限額をシミュレーションすることができるようになっています。上限額をシミュレーションする際には、医療費控除の控除額の入力をお忘れずに。

7.いざ医療費控除の申告をする

用意するものは、マイナンバーカード、源泉徴収票、領収書類(病院の領収書、ドラッグストアのレシート等)です。以前は電子申告をするためには事前に税務署に行って利用者識別番号等(ID、パスワード)を取得する必要がありましたが、今はマイナンバーカード、マイナンバーカードの暗証番号、それからスマートフォン(マイナンバーカードを読み取る機能があるもの。最近の機種はiPhoneでもアンドロイドでも読み取る機能がついています)があれば簡単に電子申告ができます。

保険診療で受診した医療機関の領収書データ(毎年原則2月9日に申告年分の情報が更新)は、マイナポータルで連携できるので、なくても大丈夫ですが(マイナポータル連携については国税庁のyoutube「マイナーポータル連携(事前準備)」参照)、保険適用外の領収書はマイナポータル連携の対象外ですので、捨てずに手元に置いておく必要があります。ふるさと納税をしている場合は、寄附金の受領書の用意も忘れずに(ふるさと納税もマイナポータル連携できるので連携していればなくても大丈夫です。連携の仕方は、ふるさと納税で使用したサイトに連携の仕方が載っています)。あと、一番大事なのはマイナンバーの暗証番号の確認ですね。入力を3回間違えるとロックがかかってしまって役所に行かないと解除できないので本当に注意です。

準備ができたら、国税庁の確定申告作成コーナーへ行きましょう。出てくる内容を順番に進めていきます。マイナポータル連携で医療費控除とふるさと納税を連携。連携しない医療費控除は個別に入力します。今年(令和5年分の申告)から、一定の条件を満たした企業が発行する源泉徴収票はマイナポータルで連携できるようですが、まだできない企業も多いかもしれません。私は従来通りスマホのカメラで源泉徴収票をパシャリとして読み込みました。カメラの読み込みも良くなってきてる気もしますが、やはりまだ完璧ではないので源泉徴収票と一致しているか確認するのは大事です。

そして、口座の入力。公金受取口座を設定している場合は自動で入力されますが、設定していない場合は、口座番号が分かるものの準備も必要ですね。

8.とは言っても確定申告する手間などを考えると…

医療費控除は上述したように基準額(10万円または所得の5%のいずれか低い額)を超えた額からが、控除の対象になります。10万円を超えた額からが対象の方(例えば年収300万円以上の会社員、公務員)の場合、医療費が101,000円の場合は1,000円が控除額で、医療費が20万円の場合は10万円が控除額となります。所得税は所得に応じて5%〜43%(復興特別所得税を除く)、住民税は原則(※2)10%です。所得税・住民税ともに税率10%の場合、医療費が101,000円の場合の減税額は200円(所得税100円、住民税100円)、医療費が20万円の場合の減税額は2万円(所得税1万円、住民税1万円)となります。

200円の控除を受けるために確定申告の手間をかけるのは、、、と考えてしまいますよね。私の場合2万円のためなら医療費控除の申告をしようと思いますが、皆さんはいかがでしょうか。

※2:自治体によって超課税率(10%より高い税率)をかけているところもあります。有名なところだと横浜市とか

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