エクセルで青色申告をしよう(7) 簡易帳簿から仕訳帳を作る

前回は、一つ一つの取引を見ながら仕訳帳に記録していきましたが、現金出納帳、預金出納帳、売掛帳、経費帳に記帳した結果とエクセルを使って、簡単に仕訳帳を作る方法がありますので、その方法をご紹介します(注1)。

IF関数とOR関数さえ分かれば何とかなりますので、エクセルが苦手な方でも、そんなに難しくないと思います。

手順としては、次のような流れになります。

① 現金出納帳から仕訳帳を作る

      ↓

② 預金出納帳から仕訳帳を作る

      ↓

③ 売掛帳から仕訳帳を作る

      ↓

④ 経費帳から仕訳帳を作る

      ↓

⑤ 必要に応じて特定取引仕訳帳を作る

      ↓

⑥ ①~⑤の仕訳帳を合算して取引全体の仕訳帳を作る(仕訳帳の完成)

1.現金出納帳から仕訳帳を作る

(野比さんの現金出納帳)

日付 摘要 相手科目 入金額 出金額  残高金額
1/4 個人口座から事業資金へ組み入れ 事業主借 50,000   50,000
1/6 パソコン購入 消耗品費   20,000 30,000
1/14 ドラ株式会社パーティ出席 接待交際費          5,000 25,000
1/31 事業用口座から現金引き出し 普通預金  5,000   30,000

1.1 現金出納帳から仕訳帳への転記が可能な理由    

野比さんの現金出納帳を見てみると、日付、摘要、勘定科目(現金と相手科目の2つ)、入出金額が記録されているのが分かります。

実は、この現金出納帳には、仕訳帳を作るために必要な情報が全部入っているのです(預金出納帳、売掛帳、経費帳についても同様です)。

したがって、エクセルを使えば、現金出納帳から仕訳帳に自動的に転記することも可能なのです。

その方法は、次のとおりです。

① エクセルで現金出納帳を作る

まずは、現金出納帳を作って下さい。ここは、エクセルでも自動化できません。手入力です。

なお、画像では最初の行に「前年より繰越」とありますが、フリーランス1年目の方は、当然、繰越金はゼロになります。2年目以降の方は、前期末の現金の金額を入力して下さい。

② 仕訳帳のフォーマットを作る

現金出納帳の横に、仕訳帳のフォーマットを作って下さい。

一段目に、日付、摘要、借方科目、貸方科目、金額と入力し、二段目以降は空欄で大丈夫です(画像では二段目に「前年より繰越」と入力してありますが、これはなくても大丈夫です)。

③ 仕訳帳に数式を入力する

仕訳帳の三段目に、転記のための数式を入力します(三段目への入力が終わったら四段目以降にコピーします)。

そして、仕訳帳に転記するときは、以下のルールを満たす数式を入力します。

1.2 転記のルール    

現金出納帳は、資産の勘定科目である「現金」と、それとセットになる相手科目から構成されています。

資産である現金については、それが増えると借方科目に記録し、減ると貸方科目に記録しますので、現金出納帳の「入金額」欄に記載があるときは「借方科目=現金」となり、そうでない場合(つまり「出金額」欄に記載があるとき)は「貸方科目=現金」となります(転記のルール1)。

そして、現金と相手科目は、セットになっていますので、「借方科目=現金」のときは「貸方科目=相手科目」となり、反対に、「貸方科目=現金」のときは「借方科目=相手科目」となるわけです(転記のルール2)。

その他の部分(日付、摘要、金額)は、現金出納帳に入力された情報を仕訳帳に反映させます(転記のルール3)。

以上、転記のルールをまとめると、次のようになります。

① 現金出納帳からの転記のルール1

入金があったときは「借方科目=現金」。出金があったときは「貸方科目=現金」。

② 現金出納帳からの転記のルール2

「借方科目=現金」のときは「貸方科目=相手科目」。「貸方科目=現金」のときは「借方科目=相手科目」。

③ 現金出納帳からの転記のルール3

その他は、現金出納帳に入力された情報を仕訳帳に反映させる。

仕訳帳には、この条件を満たす数式を入力してあげます。

それでは、仕訳帳の日付から順に入力する数式を見ていきましょう。

1.3 仕訳帳の日付欄    

現金出納帳の日付と同じものが仕訳帳にも入力されるようにします(転記のルール3)。

H6のセル(仕訳帳の三行目の日付欄)には、以下の数式を入力します。

=A6

1.4 仕訳帳の摘要欄    

現金出納帳の摘要と同じものが仕訳帳にも表示されるようにします(転記のルール3)。

I6のセル(仕訳帳の三行目の摘要欄)には、以下の数式を入力します。

=B6

1.5 仕訳帳の借方科目欄    

先ほどの転記のルール1、2を満たす数式を入力します。

① 現金出納帳からの転記のルール1

入金があったときは「借方科目=現金」。出金があったときは「貸方科目=現金」。

② 現金出納帳からの転記のルール2

「借方科目=現金」のときは「貸方科目=相手科目」。「貸方科目=現金」のときは「借方科目=相手科目」。

J6のセル(仕訳帳の三行目の借方科目欄)には、以下の数式を入力します。

=IF(D6>=1,”現金”,C6)

この数式の意味は、D6(現金出納帳の三行目の入金額欄)が1以上であるならば、現金と表示し、そうでないならば、C6と同じもの(現金出納帳の三行目の相手科目欄に入力された勘定科目)を表示する、というものです。

これで、現金出納帳に入金があったときは、仕訳帳の借方欄に現金と表示され、出金があったとき(貸方科目が現金のとき)は、借方欄に相手科目が表示されるので、転記のルール1、2を満たしたことになります。

1.6 仕訳帳の貸方科目欄    

貸方科目についても、借方科目と同様、転記のルール1、2を満たす数式を入力します。

K6のセル(仕訳帳の三行目の貸方科目欄)には、以下の数式を入力します。

=IF(E6>=1,”現金”,C6)

この数式の意味は、E6(現金出納帳の三行目の出金額欄)が1以上であるならば、現金と表示し、そうでないならば、C6と同じもの(現金出納帳の三行目の相手科目欄に入力された勘定科目)を表示する、というものです。

これで、現金出納帳に出金があったときは、仕訳帳の貸方欄に現金と表示され、入金があったとき(借方科目が現金のとき)は、貸方欄に相手科目が表示されるので、転記のルール1、2を満たしたことになります。

1.7 仕訳帳の金額欄    

仕訳帳の金額欄には、現金出納帳の入金額欄または出金額欄に記録された金額が反映されるようにします。

IF関数を使い、現金出納帳の入金額欄が1以上ならば、入金額欄の数値を表示し、そうでないならば、出金額欄の数値を表示するとすればいいわけです。

L6のセル(仕訳帳の三行目の金額欄)には、以下の数式を入力します。

=IF(D6>=1,D6,E6)

以上で、現金出納帳の三行目のすべての項目に入力ができましたので、これを四行目以降にもコピーすれば、現金出納帳から作る仕訳帳の完成です。

なお、ここで作った仕訳帳は、借方科目または貸方科目に「現金」が含まれている取引だけを記帳したものです。

当然、借方科目または貸方科目に「現金」が含まれていない取引もありますので、それらを記帳するために、預金出納帳、売掛帳、経費帳それぞれからも、同じように、仕訳帳を作る必要があります。

2.預金出納帳から仕訳帳を作る

現金出納帳のときと同じく、まずエクセルで預金出納帳を作り、その横に、仕訳帳のフォーマットを作っていきます。

基本的な流れは、現金出納帳の作り方と一緒ですが、一つ注意点があります。

1/31の取引を見てみると、相手科目が「現金」となっています。

預金出納帳から仕訳帳にそのまま転記すると、1/31の取引は、次のように仕訳帳に転記されてしまいます。

日付 摘要 借方科目 貸方科目 金額
1/31 事業用口座から現金引き出し 現金 普通預金 5,000

しかし、これについては、既に現金出納帳から仕訳帳に転記した際に、記帳していますので、預金出納帳から仕訳帳を作るときにも、同じ記帳をしてしまうと、最後に各帳簿から作成した仕訳帳を合算するときに、一つの取引を二重に計上してしまうという問題が発生してします。

そこで、このような二重計上を避けるために、相手科目が「現金」である取引については、仕訳帳に転記しないようにします。

このことを踏まえ、仕訳帳には、以下のルールを満たす数式を入力します。

2.1 転記のルール    

預金出納帳は、資産の勘定科目である「普通預金」と、それとセットになる相手科目から構成されています。

資産である普通預金については、それが増えると借方科目に記録し、減ると貸方科目に記録しますので、預金出納帳の「入金額」欄に記録があるときは、「借方科目=普通預金」となり、そうでない場合(つまり「出金額」欄に記録があるとき)は、「貸方科目=普通預金」となります(転記のルール1)。

そして、普通預金と相手科目はセットになっていますので、「借方科目=普通預金」のときは「貸方科目=相手科目」となり、反対に、「貸方科目=普通預金」のときは「借方科目=相手科目」となるわけです(転記のルール2)。

現金出納帳のときと同じだと気づいた方もいらっしゃるでしょう。

そうなんです。現金も普通預金も「資産」の勘定科目ですので、転記のルールは同じになるのです。

そして、その他の情報(日付、摘要、金額)は、預金出納帳に入力された情報がそのまま表示されるようにします(転記のルール3)。

ただし、先ほども説明したとおり、現金出納帳と全く同じように転記してしまうと、二重計上の問題が発生しますので、それを避けるような関数を使わなければいけません(転記のルール4)。

以上の転記のルールをまとめると、次のようになります。

① 預金出納帳からの転記のルール1

入金があったときは「借方科目=普通預金」。出金があったときは「貸方科目=普通預金」。

② 預金出納帳からの転記のルール2

「借方科目=普通預金」のときは「貸方科目=相手科目」。「貸方科目=普通預金」のときは「借方科目=相手科目」。

③ 預金出納帳からの転記のルール3

その他は、預金出納帳に入力された情報を仕訳帳に反映させる。

④ 預金出納帳からの転記のルール4

「相手科目=現金」のときは転記しない。

それでは、具体的に入力する数式を仕訳帳の日付から順に見ていきましょう。

2.2 仕訳帳の日付欄    

H6のセル(仕訳帳の三行目の日付欄)には、以下の数式を入力します。

=IF(C6=”現金”,””,A6)

この数式は、C6のセル(預金出納帳の三行目の相手科目欄)が現金であるときは、空欄とし、そうでないときは、A6のセルと同じものを表示する、という意味です。

こうすることで、預金出納帳の相手科目が現金のときは、その横の仕訳帳は空欄となりますので、最後に他の帳簿の仕訳帳と合算したときに二重計上を避けられるわけです。

2.3 仕訳帳の摘要欄    

日付のところで説明したのと同じように、入力します。

I6のセル(仕訳帳の三行目の摘要欄)には、以下の数式を入力します。

=IF(C6=”現金”,””,B6)

2.4 仕訳帳の借方科目欄    

J6のセル(仕訳帳の三行目の借方科目欄)には、以下の数式を入力します。

=IF(C6=”現金”,””,IF(D6>=1,”普通預金”,C6))

この数式の意味は、C6(預金出納帳の三行目の相手科目欄)が現金の場合は、空欄とし、そうでないときは、更に場合分けをして、D6(預金出納帳の三行目の入金額欄)が1以上であれば、普通預金と表示し、そうでないときは、C6に入力された勘定科目を表示する、というものです。

前段の場合分けが転記のルール4に対応し、後段の場合分けが転記のルール1、2に対応するわけです。

① 預金出納帳からの転記のルール1

入金があったときは「借方科目=普通預金」。出金があったときは「貸方科目=普通預金」。

② 預金出納帳からの転記のルール2

「借方科目=普通預金」のときは「貸方科目=相手科目」。「貸方科目=普通預金」のときは「借方科目=相手科目」。

③ 預金出納帳からの転記のルール3

その他は、預金出納帳に入力された情報を仕訳帳に反映させる。

④ 預金出納帳からの転記のルール4

「相手科目=現金」のときは転記しない。

後段の場合分けの意味は、現金出納帳から仕訳帳を作るときと同じですので、分からないときは、そちらを見直してみて下さい。

このように、IF関数を二回使うことで、二重計上の問題を避けつつ、預金出納帳からの転記のルール1、2に従った転記をすることができるのです。

2.5 仕訳帳の貸方科目欄    

借方科目のときと同じように、二重計上の問題を避けつつ、預金出納帳からの転記のルール1、2、4に従って、転記をしましょう。

K6のセル(仕訳帳の三行目の貸方科目欄)には、以下の数式を入力します。

=IF(C6=”現金”,””,IF(E6>=1,”普通預金”,C6))

この数式の意味は、C6(預金出納帳の三行目の相手科目欄)が現金の場合は、空欄とし、そうでないときは、更に場合分けをして、E6(預金出納帳の三行目の出金額欄)が1以上であれば、普通預金と表示し、そうでないときは、C6に入力された勘定科目を表示する、というものです。

借方科目のときと同様、場合分けを二回することで、転記のルール1、2、4を満たすことができるわけです。

2.6 仕訳帳の金額欄    

二重計上の問題を避けつつ、預金出納帳の入金額欄または出金額欄の数値が表示されるようにします。

L6のセル(仕訳帳の三行目の金額欄)には、以下の数式を入力します。

=IF(C6=”現金”,””,IF(D6>=1,D6,E6))

これは、C6(預金出納帳の三行目の相手科目欄)が現金の場合は、空欄とし、そうでないときは、更に場合分けをして、D6(預金出納帳の三行目の出金額欄)が1以上であれば、D6の数値を表示し、そうでないときは、E6(預金出納帳の三行目の出金額欄)の数値を表示する、という意味です。

以上で、仕訳帳の三行目の入力が終わりましたので、これを四行目以降にもコピーすれば、預金出納帳から転記した仕訳帳の完成です。

1/31の取引は、仕訳帳に転記されていないことが確認できます。

3.売掛帳から仕訳帳を作る

これまで同様、まずエクセルで売掛帳を作り、その横に仕訳帳のフォーマットを作っていきます。

3.1 転記のルール    

売掛金は、現金や普通預金と同じく、資産の勘定科目なので、転記のルールも同じように考えることができます。

また、売掛帳をそのまま仕訳帳に転記すると、二重計上の問題が生じるのは、預金出納帳から仕訳帳を作るときと同様です。

但し、預金出納帳のときは、相手科目に現金がある場合だけを除けばよかったのに対し、今回は、相手科目に普通預金がある場合も除く必要があります。

つまり、売掛帳から作る仕訳帳には、相手科目に現金または普通預金がある場合に、転記をしないような関数を入力する必要があるのです。

以上をまとめると、売掛帳からの転記のルールは次のようになります。

① 売掛帳からの転記のルール1

売掛金が発生したときは(売掛金という資産が増えているので)「借方科目=売掛金」。売掛金の入金があったときは(売掛金という資産が減っているので)「貸方科目=売掛金」。

② 売掛帳からの転記のルール2

「借方科目=売掛金」のときは「貸方科目=相手科目」。「貸方科目=売掛金」のときは「借方科目=相手科目」。

③ 売掛帳からの転記のルール3

その他は、売掛帳に入力された情報を仕訳帳に反映させる。

④ 売掛帳からの転記のルール4

「相手科目=現金または普通預金」のときは転記しない。

仕訳帳には、以上の条件を満たす数式を入力していきます。

それでは、具体的に見ていきましょう。

3.2 仕訳帳の日付欄    

H6のセル(仕訳帳の三行目の日付欄)には、以下の数式を入力します。

=IF(OR(C6=”現金”,C6=”普通預金”),””,A6)

この数式は、C6(売掛帳の三行目の相手科目欄)が、現金または普通預金のときは、空欄とし、そうでないときは、A6(売掛帳の三行目の日付欄)と同じものを表示する、という意味です。

普通預金では、IF関数を使いましたが、ここでは、更にOR関数を使うことで、現金だけでなく、普通預金の二重計上も避けられるわけです。

3.3 仕訳帳の摘要欄    

I6のセル(仕訳帳の三行目の摘要欄)には、以下の数式を入力します。

=IF(OR(C6=”現金”,C6=”普通預金”),””,B6)

この数式は、C6(売掛帳の三行目相手科目欄)が、現金または普通預金のときは、空欄とし、そうでないときは、B6(売掛帳の三行目の摘要欄)と同じものを表示する、という意味です。

先ほどの日付と同じように考えるわけですね。

3.4 仕訳帳の借方科目欄    

J6のセル(仕訳帳の三行目の借方科目欄)には、以下の数式を入力します。

=IF(OR(C6=”現金”,C6=”普通預金”),””,IF(D6>=1,”売掛金”,C6))

この数式の意味は、C6(売掛帳の三行目の相手科目欄)が、現金または普通預金のときは、空欄とし、そうでないときは、更に場合分けをして、D6(売掛帳の三行目の売掛金額欄)が1以上のときは、売掛金と表示し、そうでないときは、C6と同じものを表示する、というものです。

こうすることで、先ほどの転記のルールを満たせるわけです。

一見複雑に見えますが、前段の場合分けは、売掛帳の日付、摘要からの転記と同じ要領ですし、後段の場合分けは、現金出納帳からの転記と同じ要領ですので、分解して考えれば分かりやすいと思います。

3.5 仕訳帳の貸方科目欄    

借方科目のときと考え方は同じです。

K6のセル(仕訳帳の三行目の貸方科目欄)には、以下の数式を入力します。

=IF(OR(C6=”現金”,C6=”普通預金”),””,IF(E6>=1,”売掛金”,C6))

この数式の意味は、C6(売掛帳の三行目の相手科目欄)が、現金または普通預金のときは、空欄とし、そうでないときは、更に場合分けをして、E6(売掛帳の三行目の入金額欄)が1以上のときは、売掛金と表示し、そうでないときは、C6と同じものを表示する、というものです。

3.6 仕訳帳の金額欄    

基本的には、預金出納帳からの転記のときと同じように考えます。

但し、繰り返しになりますが、普通預金のときは、二重計上を避ける対象が現金だけだったのに対し、ここでは、普通預金との二重計上も避ける必要があるので、そのための数式を入力します。

L6のセル(仕訳帳の三行目の金額欄)には、以下の数式を入力します。

=IF(OR(C6=”現金”,C6=”普通預金”),””,IF(D6>=1,D6,E6))

この数式は、C6(売掛帳の三行目の相手科目欄)が、現金または普通預金のときは、空欄とし、そうでないときは、更に場合分けをして、D6(売掛帳の三行目の売掛金額欄)が1以上のときは、D6の数値を表示し、そうでないときは、E6(売掛帳の三行目の入金額欄)の数値を表示する、という意味です。

以上で仕訳帳の三行目のすべての項目に数式を入力できましたので、それを四行目以降にもコピーすれば、売掛帳から作る仕訳帳の完成です。

4.経費帳から仕訳帳を作る

これまで同様、まず経費帳を作り、その横に、仕訳帳のフォーマットを作ります。

4.1 転記のルール    

費用は、損益計算書の借方に位置するので、費用が増えたときは借方科目にその費用の勘定科目を記録し、減ったときは貸方科目にその費用の勘定科目を記録します。

もっとも、日常の取引の中で、既に発生した費用が後から減るということは考えにくいですし、そういう処理が必要な場合は、特定取引仕訳帳に記録しますので、ここでは、費用が増えた場合だけを想定します。

このように、費用が増えた場合だけを想定していますので、仕訳帳の借方科目には、経費帳の種類欄に記録された勘定科目が表示されるようにします。

また、費用の増加に伴って、資産が減ったとき、または、負債が増えたときは、貸方に、減った資産または増えた負債の勘定科目を記録しますので、仕訳帳の貸方科目には、経費帳の支払方法欄に記録された勘定科目を表示されるようにします。

そして、忘れてはいけないのが、二重計上の問題です。ここでは、支払方法が、現金、普通預金、売掛金(売掛金との相殺)の場合を除く必要があります。

以上より、経費帳からの転記のルールは次のようになります。

① 経費帳からの転記のルール1

「借方科目=経費帳の種類欄の勘定科目」。「貸方科目=経費帳の支払方法欄の勘定科目」。

② 経費帳からの転記のルール2

その他は、経費帳に入力された情報を仕訳帳に反映させる。

③ 経費帳からの転記のルール3

「支払方法=現金、普通預金、売掛金」のときは転記しない。

それでは、具体的に見ていきましょう。

4.2 仕訳帳の日付欄    

H6のセル(仕訳帳の三行目の日付欄)には、以下の数式を入力します。

=IF(OR(D6=”現金”,D6=”普通預金”,D6=”売掛金”),””,A6)

この数式は、D6(経費帳の三行目の支払方法欄)が、現金、普通預金、売掛金のときは、空欄とし、そうでないときは、A6(経費帳の三行目の日付欄)と同じものを表示する、という意味です。

こうすることで、現金、普通預金、売掛金を含む仕訳を二重計上しないように調整することができるわけです。

4.3 仕訳帳の摘要欄    

I6のセル(仕訳帳の三行目の摘要欄)には、以下の数式を入力します。

=IF(OR(D6=”現金”,D6=”普通預金”,D6=”売掛金”),””,B6)

この数式は、D6(経費帳の三行目の支払方法欄)が、現金、普通預金、売掛金のときは、空欄とし、そうでないときは、B6(経費帳の三行目の摘要欄)と同じものを表示する、という意味です。

4.4 仕訳帳の借方科目欄    

J6のセル(仕訳帳の三行目の借方科目欄)には、以下の数式を入力します。

=IF(OR(D6=”現金”,D6=”普通預金”,D6=”売掛金”),””,C6)

この数式は、D6(経費帳の三行目の支払方法欄)が、現金、普通預金、売掛金のときは、空欄とし、そうでないときは、C6(経費帳の三行目の種類欄)と同じものを表示する、という意味です。

4.5 仕訳帳の貸方科目欄    

K6のセル(仕訳帳の三行目の貸方科目欄)には、以下の数式を入力します。

=IF(OR(D6=”現金”,D6=”普通預金”,D6=”売掛金”),””,D6)

この数式は、D6(経費帳の三行目の支払方法欄)が、現金、普通預金、売掛金のときは、空欄とし、そうでないときは、D6(経費帳の三行目の支払方法欄)と同じものを表示する、という意味です。

4.6 仕訳帳の金額欄    

L6のセル(仕訳帳の三行目の貸方科目欄)には、以下の数式を入力します。

=IF(OR(D6=”現金”,D6=”普通預金”,D6=”売掛金”),””,E6)

この数式は、D6(経費帳の三行目の支払方法欄)が、現金、普通預金、売掛金のときは、空欄とし、そうでないときは、E6(経費帳の三行目の支払金額欄)と同じものを表示する、という意味です。

以上のとおり、仕訳帳の三行目に数式を入力できましたので、これを四行目以降にもコピーしてあげれば、経費帳から作る仕訳帳の完成です。

5.仕訳帳を合算する

これまで、現金出納帳、預金出納帳、売掛帳、経費帳それぞれから仕訳帳を作成してきました。

最後に、それぞれの仕訳の結果を合算(コピー&リンク貼り付け)し、一つの仕訳帳を作ります。

単なるコピー&ペーストでなく、リンク貼り付けにするのは、例えば摘要欄の修正が必要になったとき、コピー&ペーストだと、元となった帳簿(現金出納帳等)と仕訳帳両方を修正しなければいけませんが、リンク貼り付けなら、元となった帳簿だけを修正すれば良い(元となった帳簿を修正すれば自動的に仕訳帳にも反映される)からです。

上記は、コピー&リンク貼り付けで合算した結果です。

これでは、日付がばらばらなので、上から早い順になるように並び替えましょう。

手動で並び替えるのは大変なので、フィルターいう機能を使います。

A3のセルが選択されている状態で、「並び替えとフィルタ」の「フィルタ」を選択します。

そうすると、上記のように、フィルタが設定されますので、A3のセル(日付)の三角ボタンを押して、「昇順」を選びます。

そうすると、上記のように、日付順に整理された仕訳帳になります。

6.特定取引仕訳帳について

仕訳帳には、全ての取引を記録することが必要です。

おそらく、4つの簡易帳簿(現金出納帳、預金出納帳、売掛帳、経費帳)それぞれから仕訳帳を作り、最後に、それら仕訳帳を合算することで、全ての取引を記録した仕訳帳ができていると思います。

しかし、例外的に、これら4つの帳簿に記録できない取引がある場合には、それを特定取引仕訳帳(フォーマットは普通の仕訳帳と同じで、題名だけ変えます)に記録し、4つの簡易帳簿から作る仕訳帳を合算する際に、特定取引仕訳帳も一緒に合算します。

そうすることで、漏れのない仕訳帳を作ることができます。

例外的な仕訳としては、次のようなものが考えられます。

① 減価償却が必要な資産を買った場合

減価償却が必要な資産を買った場合、購入時に資産に計上し、数年にわたって経費に落としていくのですが、この処理の仕訳に漏れが出ます。また、クレジットカードで買った場合は買ったときの仕訳にも漏れが出ます。

(クレジットカードで買ったときの仕訳の例)

日付 摘要 借方科目 貸方科目 金額
4/1 パソコン購入 工具器具備品 未払金 600,000

(原価償却時の仕訳の例)

日付 摘要 借方科目 貸方科目 金額
12/31 パソコン減価償却 減価償却費 工具器具備品 150,000

② 経費から家事分の金額を除く処理をする場合

家のインターネット使用料や水道光熱費のように、事業用にも生活用にも使っている費用(家事関連費)を全額費用計上した場合、家事分を除外する仕訳をしなければなりませんが、4つの簡易帳簿ではこの処理ができないので、特定取引仕訳帳に記録します。

(家事分を控除する仕訳の例)

日付 摘要 借方科目 貸方科目 金額
12/31 家事分を通信費から除外 事業主貸 通信費 100,000

*家のインターネット使用料や水道光熱費を事業用のクレジットカードで支払っている場合などは、費用計上した金額から家事分を除外する処理が必要になってくるのでご注意ください。

上の①、②のような処理を決算整理と言い、決算整理には、他にも、未入金の売り上げを追加計上する、未払いの諸経費を追加計上する、といった処理があります(これらは期中現金主義、期末発生主義で経理処理している場合などに必要な処理になります)。

もっとも、普段から発生主義ベースで売掛帳、経費帳に記帳していれば、①、②のような処理がない限り、決算整理として普段と違う経理処理をする必要性は出てこないと思います。

反対に、①、②のような処理が必要な方は、特定取引仕訳帳に忘れずに記帳して下さい。

そして、仕訳帳が一通りできた段階で、総勘定元帳の作成に移る前に、一度、漏れがないか確かめてみて下さい。

漏れのない仕訳帳であることの確認ができたら、仕訳帳の完成です。

7.終わりに

以上で、エクセルを使った仕訳帳への転記の仕方の説明を終わります。

仕訳帳への転記は、IF関数やOR関数を使うため、最初は大変かもしれませんが、慣れれば簡単ですので、頑張って下さい。

次の記事では、総勘定元帳の作成に移りたいと思います。

決算書類の完成まであともう少しです。頑張りましょう。

《参考文献》

注1 ここでご紹介する方法は、笠原清明著「フリーで仕事を始めたらまっさきに読む経理・税金・申告の本」(株式会社クロスメディアパブリッシング・2014)p.141以下を参考にしたものです。

 

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