エクセルで青色申告をしよう(9) 試算表、貸借対照表、損益計算書を作る
前回は、総勘定元帳を作りました。
いよいよ大詰めです。
最後に、試算表を作り、そこから貸借対照表と損益計算書を作りたいと思います。
今回も、野比さんの例を参考に説明を進めます。
1.試算表を作る
試算表とは、各元帳の残高を記載して、借方と貸方の数字に誤りがないかチェックするためのものです。
というのも、複式簿記では、一つの取引を二つの視点から記録するわけですが、同じ取引を一つの視点は借方に記録し、もう一つの視点は貸方に記録しますので、仕訳帳と総勘定元帳が正確であれば、試算表の借方と貸方の合計額は必ず一致します。
逆にいえば、試算表の借方と貸方の合計額が一致しないときは、仕訳帳か総勘定元帳に誤りがあるわけです。
仕訳帳と総勘定元帳には取引を正確に記録しなければなりませんので、試算表を作って、誤りがないかチェックしましょう。
試算表のフォーマットは「青色申告者のための貸借対照表作成の手引き」(令和元年10月)p.14を参考に、以下のように作りました(「手引き」は国税庁のホームページからダウンロードできます)。
試算表のフォーマットを作ったら、すべての元帳の残高金額が試算表に反映されるようにします。
ところで、貸方に「元入金」という項目があると思います。
これは、法人で言うところの資本金であり、期首の金額と期末の金額は、同額です。
1年目の場合、開業資金を元入金か事業主借で経理処理するのですが、どちらで処理しても納税額に違いはありません。野比さんの場合、事業主借で処理したので、元入金は0円です。
なお、2年目以降は、次のように計算して元入金の金額を求めます。
(翌期首の元入金の計算式)
=期末の元入金+青色申告特別控除前の所得金額+事業主借-事業主貸
借方と貸方の合計金額が一致したら、試算表の完成です。
もし一致しなかったら、これまでの作業のどこかに誤りがありますので、一から見直してみてください。個人的な経験からすると、金額を入力ミスしていた、普段と異なる取引(例.クレジットカードの年会費の引落)の仕訳を忘れていた、仕訳帳を作るときに二重計上をしていた、といったことが時々あります。
どうしてもミスが見つからない場合で、その不一致が軽微なものと認められるときは、最悪、その一致しない部分の金額を事業主借または事業主貸で調整して対処することも可能ですが(注1)、何とか一致するように努力しましょう。
試算表が完成したら、あとは簡単です。
というのも、試算表は、貸借対照表と損益計算書の両方をまとめたものなので、試算表を分解すれば、貸借対照表と損益計算書ができるのです。
貸借対照表と損益計算書のどちらを先につくってもいいのですが、貸借対照表には所得金額を入力する欄があるので、先に損益計算書を作って所得金額を計算します。
2.損益計算書を作る
まずは、フォーマットを作りましょう。
損益計算書の書式も色々ありますが、国税庁の確定申告書作成コーナーで使う損益計算書を参考に、以下の図のように作るのが便利だと思います。
フォーマットができたら、該当する箇所に試算表の数字が反映されるようにしましょう。
上記は、野比さんの平成30年1月の取引の結果を損益計算書にしたものです。
これで、損益計算書は完成です。
ちなみに、65万円の青色申告特別控除前の所得金額が65万円未満の場合、青色申告特別控除後の所得金額は0円です(マイナスにはなりません)。
3.貸借対照表を作る
次に、貸借対照表を作ります。
フォーマットは以下のような感じに作ります。
続いて該当箇所に入力していきましょう。
対応する試算表の金額が反映されるように入力していきます。右下の青色申告特別控除前の所得金額欄には、損益計算書の数字が反映されるようにします。
なお、フリーランス1年目の場合、期首の金額は0円になります。
上記は、野比さんの平成30年1月の取引を貸借対照表に記録した結果です。
貸借対照表の借方(資産の部)と貸方(負債・資本の部)の合計金額は必ず一致しますので、一致を確認したら、貸借対照表の完成です。
4.終わりに
以上で、青色申告に必要な決算書類はすべて作成できました。お疲れ様でした。
作成した決算書類をもとに、国税庁の確定申告書作成コーナーで確定申告書を作成して、申告期限までに忘れずに提出しましょう。
また、作成した帳簿類は、プリントアウトしたうえで、ファイルに綴じて保存しましょう。
目次を作ると、後から何を作ったか一目で分かるので便利だと思います。
慣れるまでは大変だと思いますが、一回やればコツがつかめると思いますので、頑張ってみてください。
最後に、次回の記事では、今回ご紹介した方法で決算書類を作成するなかで、疑問に思うことがあるかもしれない点について、解説をまとめました。
必要に応じて、ご参照ください。
≪参考文献≫
注1 税務署「青色申告者のための貸借対照表作成の手引き」(令和元年10月)p.18
*国税庁のホームページからダウンロードできます。