早わかり!!NISAの概要・メリット・デメリット

この記事では、NISA(主に一般NISA)について、制度の概要、メリット、デメリットを解説しています。

NISAの非課税のメリットは大きいですが、様々なデメリットもあるので、NISAを利用する際は、ご注意下さい。

1.NISAとは          

NISA(ニーサ)とは、投資による運用益が非課税になる制度のことを言います。

通常では、株式の売買による売却益や、配当金には、20%の税金がかかります(復興特別所得税も含めると20.315%)。

しかし、NISAを使えば、この税金がかからなくてすむのです。

NISAは、プロの投資家ではない一般の方にも投資を始めてもらうために、税金面で優遇しようということで、作られた制度です。

金融庁の調査によると、平成29年(2017年)9月末時点で、NISAの口座数は、約1100万口座とのことです。

NISAは成年者しか利用できず(未成年者はジュニアNISA)、1人1口座しか持てませんので、日本の成人人口(約1億人)を考えると、約9人に1人がNISA口座を開設していることになります(口座数の中には日本在住の外国人の方が開設したものも含まれていますので、実際にはそこまでではないと思いますが。)。

ちなみに、NISAという名称は、この制度が、イギリスのISAという個人貯蓄制度(Individual  Savings  Account)をモデルにしていることから、日本版ISAということで、NISA(Nippon  Individual Savings  Account)という愛称がつけられました。

2.NISAの種類 

NISAは2014年1月に始まりました。

当初のNISAは、100万円の枠(非課税投資枠)で買った株式等について、運用益が非課税になるというシンプルなものでした(非課税投資枠は後に120万円に拡大されました)。また、未成年者は利用できませんでした。

その後、NISAの対象者を未成年者に拡大するために、2016年1月からジュニアNISAが始まりました。

そして、2018年1月からは、長期の資産形成をサポートするために、積立NISAが始まりました。

そのため、一口にNISAといっても、2018年1月以降は、3種類のNISAがあることになります。

【NISAの種類】

○ NISA(一般NISA)

○ 積立NISA

○ ジュニアNISA

 

成年者を対象にしているのがNISA(一般NISA)と積立NISAで、未成年者を対象にしているのがジュニアNISAです。

ちなみに、“NISA”と表記する場合、それが、3種類のNISA全体のことを指すのか、それとも、3種類のうちの一つである初期のNISAを指すのか分かりづらいことから、初期のNISAは、「ジュニアNISA」、「積立NISA」と区別する意味で「一般NISA」とも呼ばれたりします。

この記事では、どちらのNISAを指すのか基本的に文脈から推測できるとは思いますが、文脈から分かりづらそうな時は、一般NISAと表記しています。

3.NISA、積立NISA、ジュニアNISAの概要   

各NISAの概要は次の表のとおりです。

NISA(一般NISA) 積立NISA ジュニアNISA
利用できる方 日本在住の20歳以上の方 日本在住の20歳以上の方 日本在住の0歳~19歳の方
開設できる口座数 1人1口座 1人1口座 1人1口座
非課税対象の金融商品 株式、投資信託、ETF、REITなど 長期の積立、分散投資に適した投資信託 株式、投資信託、ETF、REITなど
非課税投資枠(年間) 120万円 40万円 80万円
非課税期間 最長5年間 最長20年間 最長5年間
投資可能期間 2014年~2023年 2018年~2037年 2016年~2023年
課税口座との損益通算 不可 不可 不可
損失の繰越控除 不可 不可 不可
その他 *積立NISAとの併用不可。 *買付の方法が積立に限定されている。

*NISAとの併用不可。

*18歳になるまでは払出制限がある。

続いて、一般NISAについて、詳しく解説したいと思います。積立NISA、ジュニアNISAについては、それぞれ別の記事で解説していますので、そちらをご覧ください(積立NISAの解説記事はこちらジュニアNISAの解説記事はこちら)。

4.NISAの概要

4.1 利用できる人     

NISAを利用できるのは、日本に住んでいる20歳以上の人です。

年齢の基準日は、口座を開設する年の1月1日現在です。

4.2 開設できる口座数     

開設できるNISA口座の数は、1人1口座です。

また、積立NISAとの併用はできないので注意が必要です(1年ごとに、NISAと積立NISAを変更することは可能です。)。

4.3 非課税対象の金融商品     

NISA口座で購入できる金融商品と購入できない金融商品は次のとおりです。

上場している会社の株式(トヨタ自動車、任天堂等)や多くの投資信託が非課税の対象になっていますので、一般の方が投資をする分には、十分なラインナップだと思います。

4.4 非課税投資枠(年間)     

NISAでは、毎年120万円の範囲(非課税投資枠)で、金融商品を購入することができます。

この枠は、その年限定のものであり、翌年に持ち越すことはできません。

また、「使い切り」であるため、買った金融商品を売っても、枠は元に戻りません。

なお、ここにいう120万円という枠は、「買ったときの金額」を基準としますので買った後に値上がりしても、値上がり分が枠を消費することはありません。

4.5 非課税期間     

非課税期間とは、「その期間内であれば、株式の売買による売却益や配当金などが非課税となる期間」のことをいいます。

NISAでは、この非課税期間が5年間となっています。

それでは、非課税期間が終わった場合はどうなるのでしょうか?

この場合、次の3つのパターンのどれかを取ることになります。

① 非課税期間終了後、非課税口座から課税口座(一般口座、特定口座)に移管する。

② 非課税期間終了までに売却する。

③ 売却せず、非課税期間終了後、翌年の非課税投資枠(「NISA」口座)を使って引き続き非課税口座で保有する(これを「ロールオーバー」といいます。)。

なお、以前は、ロールオーバー可能な金額は、翌年の非課税投資枠の範囲内(つまり120万円)でしたが、現在はこの制限が撤廃されており、全額ロールオーバー可能です。

但し、次で説明する通り、NISAの投資可能期間(毎年、非課税投資枠が発生する期間)は、2023年までですので、2023年以降に非課税期間が終わる非課税枠については、ロールオーバーするための翌年の非課税枠がありません。そのため、ロールオーバーという選択肢は取ることができず、課税口座に移管するか、売却することになります。

4.6 投資可能期間     

NISAは、2023年までは、毎年120万円の非課税投資枠を使えますが、2024年以降は、新たな非課税投資枠を使うことができません。

あくまで新たな非課税投資枠がなくなるというだけで、2023年までにNISA口座で購入した株式等も、5年間の非課税期間内は、非課税で運用できます。

*NISA(一般NISA)が始まった当初は、いずれ恒久化するのではないかと言われていましたが、2018年1月現在では、具体的な話はないようです。今後、法改正により、投資可能期間が延長される可能性はありますが、どうなるかは不明です。

4.7 NISAのイメージ     

5.NISAのメリット

NISAのメリットは、何といっても、NISA口座で購入した金融商品の運用益(売却差益、配当金等)が、最大5年間、非課税になるというところです。

例えば、毎年120万円の枠をフルに使って(実際にはぴったり120万円分を買うのは、難しいですが。)、配当利回り3%以上の株式(東証一部上場企業にも配当利回り3%以上の会社はそれなりにあります。)を買って、売らずに5年間保有していれば、5年間で次のような節税効果を得られることができます。

*配当金は、会社の決算期と株式の購入時期によっては、購入した年にも受け取ることができますが、上の表では、購入した年には配当金を受け取っていないものとして計算しました。

このように、配当金に対する節税効果だけでも、5年間で7万2000円の恩恵を受けることができます。もちろん、増配により、上の試算以上の節税効果が得られることもありますし、値上がりした株を売却すれば、売却益に対する非課税の恩恵も受けることができます。

6.NISAのデメリット

投資の運用益が非課税になるというメリットを持つNISAですが、次のようなデメリットもあります。

① NISA口座内で損失が生じた場合、課税口座の利益と損益通算することができない。

② NISA口座内の損失を翌年以降に繰り越し控除することができない。

③ NISAの非課税期間内に、保有している資産が元本割れをし、非課税期間終了後に元に戻った場合(実際には利益が出ていない場合)でも、税金が取られる。

どういう意味なのか、一つずつ解説します。

6.1 課税口座との損益通算ができないというデメリット     

まずは、次の表を見てください。

上の【パターンA】、【パターンB】とも、同じA株とB株を買ってトータルで10万円のプラスが出ていることに変わりはありません。

では、A株とB株を売って、利益と損失を確定した場合、税金を引いた後の手取りの利益はどうなるでしょうか?(復興特別所得税を除いた課税額20%で計算します。)

税金で有利な「NISA」口座を利用した【パターンB】の方が、NISA口座を利用していない【パターンA】よりも手取りの利益が少なくなってしまいました。

なぜこのようなことが起きたのでしょうか?

もう一度、上の表を見てみましょう。【パターンA】と【パターンB】では、「譲渡益」の部分が違っています。

【パターンB】も10万円のプラスじゃないの?と思うかもしれませんが、そう思うのは、無意識に、A株の利益(プラス)からB株の損失(マイナス)を引き算しているからです(これを「損益通算」といいます。)。

課税口座内であれば、この損益通算ができるのですが、NISA口座では利益も損失もなかったものとして扱われるため、課税口座とNISA口座間では、損益通算ができないのです。その結果、このような逆転現象が生じてしまうのです。

これが、課税口座との損益通算ができないというデメリットであり、個人的には、NISAの最大のデメリットだと思っています。制度の不備というべきであり、改善が望まれます。

7.2 損失の繰越控除ができないというデメリット     

課税口座では、株式や投資信託などの売買により損失が出た場合、最大で3年間、翌年以降の利益と相殺することができます(これを「損失の繰越控除」といいます。)。

具体例で見てみましょう。

上の例を見てみますと、まず、2017年は、投資による収支がマイナスですので、税金が発生しないのは当然です。

一方、2018年は、100万円の利益が出ているので、本来であれば、20%の税金(イコール20万円の税金)がかかってきますが、損失の繰越控除により、前年の損失と相殺して、利益を0とすることが可能なのです(ただし、損失の繰越控除のためには、確定申告が必要です。)。

しかし、損失の繰越控除ができるのは、課税口座同士での話です。そのため、2017年はNISA口座で100万円のマイナスが出たけど、2018年は課税口座で100万円のプラスが出たという場合は、本来の20%の税金がかかってしまうのです。

課税口座との損益通算ができない以上、損失の繰越控除ができないのも当然と言えば当然なのですが、損益通算の問題と同じく、改善が望まれます。

7.3 元本回復しただけでも課税というデメリット     

NISAの3つ目のデメリットは、購入した株式などが元本割れをし、その後、購入した時の株価まで戻った場合でも、課税されるおそれがあるというものです。

これについても、具体的に見ていきたいと思います。

まずは、次のような流れを見てください。

一時は1株1000円にまで落ち込んでいたA社株式ですが、1株3000円にまで戻ってひと安心。損失がでなくて良かったと思うでしょうが、そうではありません。この場合も、税金が取られてしまうのです。

どういうことかというと、A社株式をNISA口座から課税口座に移したときに、その時点の評価額で、A社株式を取得したと扱われてしまうのです。

そのため、本来は、株価が購入時の価格に戻っただけのはずなのに、NISA口座から課税口座に移した時の評価額(上の例では10万円)よりも売却時の評価額(上の例では30万円)の方が高い場合には、その差額(上の例では20万円)に対して、20%の税金がかかってしまうのです。

最初から課税口座で購入していれば、このような事態は発生しませんので、結果的にNISAを使ったことで損をしてしまうことになるのです。

8.NISAまとめ

8.1 メリット・デメリットまとめ     

【メリット】

○ 投資の運用益が5年間、毎年120万円の範囲で非課税になる。

【デメリット】

○ 課税口座との損益通算ができない。

○ 損失の繰越控除ができない。

○ 非課税期間終了後、実際には利益が出ていないのに課税されるおそれがある。

8.2 NISAを始めるべきか?     

こうやって改めてNISAのメリットとデメリットを見比べると、NISAとは、利益が出れば税制面で優遇されるものの、損失が出たら税制面で不利に扱われるという、投資の結果次第で有利不利が決まる不完全な制度と言わざるを得ないでしょう。

確かに、ハイリスクな投資を避けて、長期の分散、積立投資を心がければ、損失が生じるリスクを最小化し、NISAの非課税の恩恵を受けられる可能性も高くなります。

しかし、2018年1月からは、20年という長期の非課税期間を売りにした積立NISAが始まりましたので、そのような安全な投資をするのであれば、積立NISAを使った方が良いと思います(NISAと積立NISAの併用はできません)。

そのため、個人的には、NISAよりも、積立NISAを利用したほうが良いとは思いますが、次のような方には、NISAの方が向いていると思います。

① 個別の株式や毎月分配型の投資信託などを買いたい人、40万円の非課税投資枠では満足できない方

・・・積立NISAでは、株式や毎月分配型の投資信託を買うことができず、非課税投資枠も40万円と少ないので、それでは自分のやりたい投資ができないという方は、購入できる金融商品のラインナップが幅広く、非課税投資枠の大きいNISAの方が向いていると思います。

② リスクを取って大きな節税効果を狙いたい方

・・・NISA口座で買った金融商品が値上がりしたときの節税効果は大きいので、元本割れにより生じるNISAのデメリットを承知で、リスクを取って大きな節税効果を狙いたい方にはNISAの方が向いていると思います。

ちなみに、私は、2017年まではNISAで運用していましたが、2018年1月以降は、積立NISAに切り替えました(私の運用成果はこちらの記事をご覧ください。)。非課税期間の長い積立NISAでは、リスクを時間分散できるので、極力リスクを避けたい方には、積立NISAの方がおすすめです。

NISAを検討中の方は、是非、積立NISAも検討してみてください(積立NISAについて詳しくはこちらをご覧ください)。

 

【参考サイト】

金融庁のホームページ

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