NHK BS1スペシャル「ウイルスVS人類4 新型コロナ免疫の謎に迫る」を観て 

昨日(2020年7月18日)放送されたNHK BS1スペシャル「ウイルスVS人類4 新型コロナ免疫の謎に迫る」が新型コロナウイルス(COVID-19)について勉強になったので、内容を簡単にご紹介するとともに、私が新型コロナウイルス対策について感じたことを述べたいと思います。

1.番組のご紹介

【番組HP】
https://www2.nhk.or.jp/hensei/program/p.cgi?area=001&date=2020-07-18&ch=11&eid=17142&f=2443

【ゲスト】
・舘田一博氏(日本感染症学会理事長 東邦大学教授)
・宮坂昌之氏(大阪大学名誉教授) 
・岩崎明子氏(イェール大学医学部教授) 

番組では、感染症の専門家が新型コロナウイルスについて現在分かっていることを解説されていました。その中でも、以下の内容が特に印象的でした。ただし、新型コロナウイルスについては、いまだ原因が分からないことが多いようで、以下の内容もその点を留意する必要があります。

  1. 世界的な傾向として、新型コロナウイルスは、女性よりも男性の方が死亡率が高い。高齢者の死亡率は高い。子どもの死亡率は低い。

  2. 人間の免疫には、自然免疫と獲得免疫がある。自然免疫は人間が元から持っている免疫で、獲得免疫は感染症を克服することで得られる免疫。ワクチン接種は獲得免疫を作るためであり、つまり、毒性を弱めたウイルスをワクチンとして接種することで、免疫機能がそのウイルスを記憶し、実際にウイルスに感染したときに、効果的にウイルスを攻撃することができるようになる。

  3. 新型コロナウイルスの検査には、PCR検査、抗体検査、抗原検査がある。PCR検査と抗原検査は、現在、感染しているかを調べるもので、抗体検査は、過去に感染していたかを調べるもの(感染してから抗体ができるまで時間がかかるため)。

  4. インフルエンザは毎年型が違うため、毎年予防接種が必要なのではなく、予防接種をしても抗体の持続期間が短いためである(そのため、あまり早く予防接種をし過ぎると、インフルエンザのピーク時に抗体が残っていない可能性があり、予防接種をするなら、できるだけ遅い時期にするのが良い)。新型コロナウイルスについても同様で、一度感染して抗体ができても持続期間は短い可能性がある。そのため、過去に感染していても抗体検査で判明せず、また、再感染する可能性がある。

  5. 日本を含むアジア地域が欧米に比べ死者数が少ないのは、①生活習慣の違い(ハグをしない、土足で家に入らない、マスクをする等)、②過去に新型コロナウイルスと類似のウイルスに感染したことがあり、自然免疫の範囲で対応できている(交差免疫)、③BCGワクチンの接種により自然免疫が増強されている、といった理由が考えられるが、はっきりとしたことはまだ分かっていない。

  6. 現在、風邪の原因とされているコロナウイルスは4種類あり、新型コロナウイルスも将来的には、5種目の風邪の原因として位置づけられるのかもしれない。

  7. 将来的にはワクチンができるのかもしれないが、その精度はインフルエンザワクチンと同程度のものである可能性が高い。新型コロナウイルスとは、共存していく心持ちでいる必要がある。

  8. 免疫力を高めるためには、規則正しい睡眠、運動、食事をすることが大切。

以上が、特に印象に残った内容でした(ただし、私が理解できた範囲の内容ですので、間違っている可能性があるかもしれません。ご容赦ください)。

2.番組を観た感想

現在、新型コロナウイルス感染者ゼロを目指すかのような風潮がありますが、毎年インフルエンザ感染者が発生するのと同様に、新型コロナウイルスの感染者をゼロにすることは無理であり、感染者ゼロを目指すことがそもそも間違っているという認識に立つ必要があるように思います。

「新型コロナクライシスに対する大木提言」によれば、日本における新型コロナウイルスの死亡率は、季節性インフルエンザと変わらない0.01%~0.04%であると考えることが妥当とされており(5頁)、7月に入って、日々、数百名単位での新規感染者数の増加が報じられる一方で、新規死亡者数は0~2名程度で推移していることとも整合しているように感じられます(感染者数、死亡者数のデータはこちらのNHKの特設サイトによります)。

季節性インフルエンザによる死亡率を社会として受け入れてきたのですから、新型コロナウイルスによる死亡率も社会として受け入れ可能なリスクと考えるべきです。そのリスクをゼロにしようと、過度な自粛要請を行うことは、いたずらに経済悪化、社会不安の増大、経済的困窮者の増加を招くだけであると考えます。

三密を避け、ソーシャルディスタンスを維持することは、感染を防ぐために大事なことであり、病院の病床が限られている中で重症者数をコントロールするために、これらの取り組みを一定程度する必要はあるでしょう。ですが、居酒屋での飲み会、スポーツ観戦、ライブなど、三密を避けられないレジャーやイベントを一生規制するわけにはいかないと思います。新型コロナウイルスをゼロにすることができない以上、どこかで折り合いをつける必要があるのであり、個人個人がそのことを認識する必要があると思います。

重症者数が病院の受け入れ可能数を超えないように注意する必要はあるものの(上記の大木提言9頁以下ではICU利用率50%のみをモニターとすべきとしています)、それを下回る状態であれば、過度にレジャーやイベントを制限する必要はないと思います。そして、個人レベルでは、新型コロナウイルスにかかっても重症化しないよう、免疫力を高めるために、規則正しい生活(睡眠、食事、運動)をする、こまめな手洗い、うがいをする、といった基本的なことを心掛けるのが大事だと思います。また、自粛警察のように過度な自粛を他人に強いることは慎むべきです(自分が自粛するのは個人の自由です)。

なお、このような意見に対しては、レジャーやイベントを再開するとすぐに感染者数増加により病院の収容人数を超過し、病院がパンクするリスクがあるとの批判が考えられますが、新型コロナウイルス陽性者全員を強制入院させるのではなく、ドイツ(リンク先はNHKのサイト)やイギリス(リンク先は下記の山中教授のHP)のように、軽症の場合は自宅療養とすればその問題は避けられると思います(日本では、新型コロナウイルスは第二類感染症に指定されているため、感染症法により感染者は隔離する必要があります。上記大木提言5頁参照)。もちろん、自宅療養の場合、容体急変のリスクはありますが、上述したように、新型コロナウイルスによる死亡率が低い日本では、(季節性インフルエンザの死亡リスクを受け入れているのと同様に)そのリスクを社会として受け入れるべきと考えます。

*京都大学山中伸弥教授も積極的に情報発信されてますので、ご関心がありましたら、ご覧ください。
https://www.covid19-yamanaka.com/

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