早わかり!!ジュニアNISAの概要・メリット・デメリット

この記事では、ジュニアNISAについて、制度の概要、メリット、デメリットをまとめました。

複雑なジュニアNISAの仕組みについて、できるだけ分かりやすくまとめたので、ジュニアNISAについて知りたい方の参考になると思います。

目次

1.ジュニアNISAとは

ジュニアNISAとは、子どもが大学に入学するときや、高校を卒業して社会人になるときに必要な資金を用意するため、長い期間をかけて資産形成をすることを目的に作られた制度です。

他のNISA(一般NISA、積立NISA)同様、一定の範囲で、投資による運用益が非課税になります。

ジュニアNISA口座は、子どもが0歳のときから開設し、運用することができますが、赤ちゃんが自分で投資資金を用意することはできませんし、資産運用をすることもできませんので、通常は、両親やおじいちゃんおばあちゃんが投資資金を用意し、両親が子どもの代理人として、子どもの代わりに資産運用をすることになります。

子どもが大きくなって投資に興味を持てば、子どもと一緒に資産運用をしても良いですから、ジュニアNISAは、子どもにお金について学んでもらう良いきっかけになるかもしれません。

ただし、ジュニアNISAは、非課税の恩恵が受けられるとはいえ、制度がかなり複雑ですし、子どもが18歳になるまでは、非課税での払出しに制限がかかるなど、他のNISAにはない特徴もありますので、制度をよく理解した上で、ジュニアNISAを始めた方が良いと思います。

2.ジュニアNISAの概要

ジュニアNISAの概要
利用できる方 日本在住の0歳~19歳の方
開設できる口座数 1人1口座
非課税対象の金融商品 株式、投資信託、ETF、REITなど
非課税投資枠(年間) 80万円
非課税期間 最長5年間
投資可能期間 2016年~2023年
課税口座との損益通算 不可
損失の繰越控除 不可
その他 18歳になるまでは払出制限がある。

2.1 運用益が非課税に     

株式や投資信託等を売買して、利益(売却益、配当金など)を得た場合、通常は、20%(復興特別所得税込みだと20.315%)の税金が取られてしまいます。

しかし、ジュニアNISA口座で取引をした場合は、利益に税金がかかりません。

つまり、手取りの金額が、税金で取られる分だけ増えるわけです。

2.2 ジュニアNISAを利用できる人     

ジュニアNISAを利用できるのは、日本に住む0歳~19歳の方です。

通常は、両親が子どもの代理人として、子どもの代わりに口座を開設し、入金して、資産運用をしていくことになると思います(口座名義は子ども名義になります。)。

なお、開設できる口座数は、1人1口座です。

2.3 非課税対象の金融商品     

ジュニアNISA口座で購入できる金融商品と購入できない金融商品は次のとおりです。

上場している会社の株式(トヨタ自動車、任天堂等)や多くの投資信託が非課税の対象になっていますので、一般の方が投資をする分には、十分なラインナップだと思います。

2.4 非課税投資枠(年間)     

ジュニアNISA口座では、毎年80万円の範囲(非課税投資枠)で、金融商品を購入することができます。

この枠は、その年限定のものであり、翌年に持ち越すことはできません。

また、「使い切り」であるため、買った金融商品を売っても、枠は元に戻りません。

なお、ここにいう80万円という枠は、「買ったときの金額」を基準としますので、買った後に値上がりしても、値上がり分が枠を消費することはありません。

2.5 非課税期間     

非課税期間とは、「その期間内であれば、株式等の売買による売却益や配当金などが非課税となる期間」のことをいいます。

ジュニアNISAでは、この非課税期間が5年間となっています。

非課税期間が終わった後、保有している株式等がどうなるかは、少し分かりづらいので、後述の「3.ジュニアNISA制度の詳しい仕組み」で解説します。

2.6 投資可能期間     

ジュニアNISAは、2023年までは、毎年80万円の非課税投資枠を使えますが、2024年以降は、新たな非課税投資枠を使うことができません

なお、投資可能期間終了前(2023年12月31日前)に非課税枠を使って購入した株式等については、投資可能期間終了後も、5年間の非課税期間終了まで(例えば、2020年の非課税枠を使った場合は、2024年12月31日まで)、非課税で運用することができます。

2.7 18歳までの払出し制限     

ジュニアNISAでは、ジュニアNISA口座からの払出し(出金など)に制限があり、原則として、子ども(口座名義人)が18歳になるまでは、払出しをすることができません。

もし、18歳前に払出しをすると、ジュニアNISA口座は廃止され、過去の利益に対して遡って税金が課せられてしまいます

但し、例外的に、災害等やむを得ない事情がある場合には、18歳前であっても、非課税で払出しをすることができます(税務署の確認を得ることが必要です。)。

3.ジュニアNISA制度の詳しい仕組み

3.1 非課税口座と課税ジュニアNISA口座     

ジュニアNISA口座を開設すると、運用益が非課税となる「非課税口座(非課税枠)」と、運用益が課税される「課税ジュニアNISA口座」が設けられます。

また、ジュニアNISA口座を開設する場合は、セットで未成年口座(課税口座)も開設することになります。

どうして、非課税であるはずのジュニアNISA口座の中に、課税口座があるのか疑問に思われるかもしれません。他のNISA(一般NISA、積立NISA)には、NISA口座内に課税口座などありませんし。

ジュニアNISA口座内に課税口座が設けられた理由は、「払出し制限」にあります。ジュニアNISA口座からの払出し(出金など)は、原則として、子ども(口座名義人)が18歳になるまでは、制限されています。

もし、子どもが18歳になるまでに、ジュニアNISA口座から払出しをすると、過去の利益に対して遡って課税されてしまいます。

子どもが18歳になるまで払出しを制限したのは、ジュニアNISAが大学進学や就職といった子どもの将来のための資産形成を目的にした制度だからです。

未成年口座(課税口座)からの払出しには、このような制限はありませんので、この「払出し制限」は、ジュニアNISA口座に特有の制度となっています。

ジュニアNISA口座内からの払出しを制限するとして、非課税口座で株式等を購入した後、それを売却した代金や配当金などを、どこで管理するかという問題が発生します。未成年口座では自由に払出しができてしまうので、未成年口座で管理するわけにはいきません。

そこで、余った資金を管理するための口座として、課税ジュニアNISA口座が設けられたのです。

課税ジュニアNISA口座では、払出しは制限されていますが、課税ジュニアNISA口座に入金された資金を使って運用をすることは可能です。

但し、名前からも分かるとおり、課税ジュニアNISA口座内で生じた運用益に対しては、年20%(復興特別所得税を含めると20.315%)の税金が課せられます。

3.2 ロールオーバーと継続管理勘定     

さらに、分かりづらいのが、非課税期間の経過後、非課税口座で保有している株式等がどうなるかという問題です。

例えば、2016年の非課税枠を使ってA株式を購入したとします。ジュニアNISA口座の非課税期間(売却益や配当金に課税されることなく保有できる期間)は、5年間ですので、2020年までは、そのまま非課税口座で保有することができます。

では、非課税期間を終えたときに、どうなるかというと、そのときは、次の3つのどれかを選ぶことになります。

① A株式を課税ジュニアNISA口座に移管する。

② A株式を売却する(代金は課税ジュニアNISA口座へ)。

③ 2021年の非課税枠を使って、引き続き、非課税口座内でA株式を保有する(これを「ロールオーバー」といいます。)。

*A株式の評価額が80万円を超えていても、全額、ロールオーバーできます。以前は、ロールオーバー可能な金額に上限がありましたが、現在は、上限が撤廃されています。

ところが、ジュニアNISA口座の投資可能期間(毎年、新たな非課税投資枠が発生する期間)は、2023年までですので、2024年以降は、引き続き非課税口座で保有したくても、移し替えるための新たな非課税投資枠がなく、ロールオーバーをすることができなくなってしまいます。

そこで、ジュニアNISA口座では、「継続管理勘定」という仕組みを作って、移し替え先がなくなる2024年以降は、ここに移し替えることを可能にしました。継続管理勘定に移し替えれば、引き続き、非課税で継続保有することができますし、売却することも可能です。

したがって、2023年以降に非課税期間が終了する場合は、非課税口座で保有するA株式について、先程とは違って、次の3つのどれかを選ぶことになります。

① A株式を課税ジュニアNISA口座に移管する。

② A株式を売却する(代金は課税ジュニアNISA口座へ)。

③ 継続管理勘定に移管して、引き続き、非課税でA株式を保有する(ロールオーバー)。

*継続管理勘定に移し替え可能な金額に上限はありません。

3.3 子どもが18歳になったら     

ジュニアNISA口座の払出し制限は、子ども(口座名義人)が3月31日時点で18歳である年の前年12月31日までであり、その翌日から制限が解除されます。

意味が分かりづらいですが、子どもが、18歳の誕生日を迎える年になり、誕生日が3月31日までに来る場合は、その年の1月1日から払出し制限が解除され、誕生日が4月1日以降の場合は、翌年の1月1日から払出し制限が解除されることになります。

要するに、子どもが高校を卒業する年に、払出し制限が解除されるというわけです。

【誕生日が1月1日~3月31日の人】

 18歳になる年の1月1日に払出し制限解除

【誕生日が4月1日~12月31日の人】

 18歳になる年の翌年の1月1日に払出し制限解除

払出し制限が解けることで、ジュニアNISA口座からいつでも非課税で出金することができるようになります。

また、課税ジュニアNISA口座は、払出し制限がある中、ジュニアNISA口座(非課税口座)での運用益を管理するために設けられたものですので、払出し制限が解けることで、その役目を終え、廃止されることになります(課税ジュニアNISA口座で保有していた株式等は、未成年口座に移管されます)。

3.4 子どもが20歳になったら     

子ども(口座名義人)が20歳になって、最初の1月1日を迎えると、その時点で、自動的に成人NISA口座が開設されます(一般NISAにするか、積立NISAにするか選択できます。)。

また、未成年口座(課税口座)は、成年の総合口座(課税口座)に切り替わります。

ジュニアNISA口座で保有していた株式等は、その保有区分に応じて、移行先が別れます。

【非課税口座で保有していた株式等】

・非課税期間終了までそのままの状態で保有可能です。

・非課税期間終了後は、成年の総合口座(課税口座)に移管しますが、一般NISA口座の非課税投資枠を使ってロールオーバー(非課税での保有継続)することも可能です(ロールオーバー可能な金額に上限はありません。)。

【継続管理勘定で保有していた株式等】

・成年の総合口座(課税口座)に移管します。

3.5 ジュニアNISAのイメージ     

4.ジュニアNISAのメリット

4.1 運用益が非課税になること     

ジュニアNISAの最大のメリットは、投資による運用益(株式等の売却益や配当金)が非課税になる点です。

非課税期間は5年間ですが、2019年から2023年までの非課税枠を使って保有した株式等は、非課税期間終了後(2024年以降)、継続管理勘定で継続保有することができます。

この継続管理勘定は、子どもが20歳になるまで(子どもが20歳になって最初の1月1日を迎えるまで)非課税ですので、本来の非課税期間の5年間を超えて、配当金等を非課税で受け取ることも可能です。

例えば、2019年に5歳になる子どもであれば、2019年にジュニアNISAを始めると、その年の非課税投資枠で買った株式については、本来の非課税期間の5年間(2023年まで)を超えて、2024年(10歳になる年)~2034年(20歳になる年)までの11年間、配当金を非課税で受け取れます。そのため、配当金を目的とした長期投資などには向いていると思います。

4.2 子どもと一緒に投資について考えるきっかけになる     

学校では、投資(資産運用)について勉強する機会はほとんどありません。

しかし、長期の積立投資のように、少ないリスクで資産を増やす方法もあるので、人生において投資に関する知識を身につけることは、絶対に必要です。

また、投資に関する知識があれば、怪しい投資セミナーなどに引っかかるおそれもなくなります。

ジュニアNISAは、子どもと一緒に投資について考える良いきっかけになると思います。

そして、そこで学んだ知識は、子どもの人生に必ず役立つと思います。

5.ジュニアNISAのデメリット

5.1 制度が分かりづらいこと     

ジュニアNISA制度は、他のNISA(一般NISA、積立NISA)に比べて制度が複雑で、非常に分かりづらいものとなっています。

そのため、制度を理解するだけでも多くの時間を取られてしまいます。

5.2 払出し制限があること     

ジュニアNISAでは、子どもが18歳になるまでは、原則として、ジュニアNISA口座から払出し(出金など)をすることができません。18歳前に払出しをすると、過去の利益に遡って課税されてしまうため、ジュニアNISAの最大のメリットである非課税の恩恵を受けられなくなってしまいます。

このように、払出しに制限があるため、一度、ジュニアNISA口座に入金してしまうと、急な出費が必要になっても、ジュニアNISA口座内のお金を使えないというデメリットがあります。

5.3 贈与税の問題     

ジュニアNISA口座で運用するお金は、通常、両親か、祖父母が工面することになると思います。両親や祖父母が、子ども名義のジュニアNISA口座を自らの資産運用に利用することを防止するために、ジュニアNISA口座で運用するお金は、子どもに贈与したものに限定されています。

しかし、ここで贈与税の問題が発生します。

例えば、おじいちゃんが、孫のジュニアNISA口座に5年間毎年80万円ずつ入金すると、そのお金には、贈与税がかからないかが問題になるのです。

贈与税は、年間110万円までであれば非課税です。ですので、毎年80万円贈与しても贈与税の問題は発生しないようにも見えます。

ところが、5年間毎年80万円贈与するというのは、見方を変えると、最初の年に400万円(5年間毎年80万円を受け取る権利)の贈与があり、その履行行為を5年間行っているとも見て取れるのです。このようにみると、最初の年に400万円の贈与があるので、33万5000円の贈与税が取られてしまいます(贈与税は贈与を受けた人、つまり子どもに発生します。)。

このように、税務当局が毎年80万円の贈与があったと認定するか、それとも、最初の年に400万円の贈与があったと認定するかによって、贈与税を課税されるかが変わるため、しっかりとした対策が必要です。毎年、贈与契約書を作成すれば、400万円の贈与と認定されるおそれはほぼないようですが、税理士に相談して対策をするのが一番確実です。

しかし、そもそも、このような贈与税の問題を発生させること自体が、制度としておかしいと言わざるを得ません。

*ちなみに、祖父母は、孫に対して扶養義務を負っているため、孫の生活費や教育費の実費を必要な都度負担しても、それは「扶養義務の履行」であり、贈与税の対象にはなりません。ジュニアNISAの場合、孫にあげるのは運用のためのお金ですので、「扶養義務の履行」の範囲を超えている(=贈与に該当する)ものと考えられます。

5.4 課税口座との損益通算ができないこと     

未成年口座(課税口座)内で、株式等の売買により、値上がりによる売却益(利益)と、元本割れによる売却損(損失)が発生した場合、売却益から売却損を控除した金額に対して、20%の税金が課せられます(これを「損益通算」といいます。)。

しかし、ジュニアNISA口座(非課税口座)で生じた利益と損失はないものと扱われるため、未成年口座(課税口座)で生じた利益とジュニアNISA口座(非課税口座)で生じた損失を損益通算することはできません。

そのため、ジュニアNISA口座で損失が発生した場合、ジュニアNISAを利用することで、かえって納める税金が多くなるというケースが生じることがあります。

この問題は、NISA(一般NISA)と同じであり、そちらの解説記事で詳しく書いていますので、詳しくはこちらをご覧ください。

5.5 損失の繰越控除ができないこと     

未成年口座(課税口座)内で、株式等の売買により、トータルで損失が出た年があると、その損失は、次の年の利益と相殺することができます(これを「損失の繰越控除」といい、損失の繰越控除は、最大で3年間可能です。)。

しかし、ジュニアNISA口座(非課税口座)で生じた損益はないものと扱われるため、ジュニアNISA口座(非課税口座)で生じた損失は、繰越控除の対象になりません。

そのため、損益通算の問題と同様、ジュニアNISA口座(非課税口座)で損失が発生した場合、ジュニアNISAを利用することで、かえって納める税金が多くなるというケースが生じることがあります。

この問題も、NISA(一般NISA)の解説記事で詳しく扱っていますので、詳しくは、こちらをご覧ください。

5.6 元本が回復しただけで課税されることがあること     

ジュニアNISA口座内で保有していた株式等は、非課税期間が終了すると、ロールオーバーをしない限り、課税口座に移管することになります。

おそらく、20歳になるまでは、継続管理勘定にロールオーバーすると思いますが、20歳になると、継続管理勘定から成年の課税口座に移管しなければなりません。

課税口座に移管した場合、その後の値上がり益の有無は、移管時の評価額を基準に判断されますので、移管時に元本割れをしていた場合、その後、元本が回復すると、その分(元本の金額から移管時の評価額を控除した金額)が値上がり益として課税の対象になってしまいます。

このように、実質的には利益が出ていないのに、課税されてしまうという問題が生じるのです。

この問題も、NISA(一般NISA)の解説記事で詳しく扱っていますので、詳しくは、こちらをご覧ください。

6.ジュニアNISAまとめ

6.1 メリット・デメリットまとめ     

【メリット】

○ 運用益が非課税になる。

○ 子どもと一緒に投資について考えるきっかけになる。

【デメリット】

○ 制度が分かりづらい。

○ 18歳まで払出し制限がある。

○ 贈与税の問題がある。

○ 課税口座との損益通算ができない。

○ 損失の繰越控除ができない。

○ 元本が回復しただけで課税されることがある。

6.2 ジュニアNISAを始めた方が良いのか?     

ジュニアNISAは、運用益が非課税になるというメリットがあるとはいえ、制度があまりに複雑で、分かりづらいうえに、払出し制限の問題や贈与税の問題など、他のNISAにはないデメリットもあります。

正直なところ、このような不便で分かりづらい制度を使うのであれば、両親それぞれが積立NISAを始めて、年40万円の非課税枠を使って積立投資をする方が良いと思います(積立NISAについて詳しくはこちらをご覧下さい。)。

積立NISAの非課税枠をフルに使おうとすると、それだけで毎年80万円(1か月約6万6000円)を運用に回すことになりますが、子育て世代で、それ以上の余剰資金を用意できる家庭は、そう多くはないと思います。

積立NISAであれば払出し制限もないので、例えば、子どもが私立の高校に進学して入学金や授業料がかさんだ場合にも、積立NISAで買った投資信託を取り崩して、急な出費に対応することが可能です。

一般的な家庭の場合、ジュニアNISAを利用する必要性は乏しいように思います。

 

<参考にした文献、サイト等>

金融庁のホームページ

・日本証券業協会「ジュニアNISA(未成年者少額投資非課税制度)に関するQ&A」(第5版)

Follow me!